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ゆずきのBL小説ブログです。                      頼りになる幼馴染攻め×おねしょが治らない受けです。        ちまちま更新します。
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二人が保田との話を終えて、下駄箱から靴を出しているときだった。
「力くん、ちょっといいかな」
保田に呼ばれて、力は診察室へと戻った。
悠耶は、靴を履きながら不思議そうにその光景を眺めていたが、ついて行こうとはしなかった。
力は悠耶が出入り口で待っているのを確認して、声が届かないようひそひそと保田に話し始めた。
「つまりキスのお陰で、悠耶の大人になりきれなかった部分が成長したと、衛先生は思うんですか?」
「僕も、確定はできないよ。でも、前にも話したとおり、人の脳の仕組みというのは複雑なんだ。キスの刺激が悠耶くんの脳にいい影響を与えておねしょが治った、というのは、悠耶くんの場合には充分にありえると思うんだ」
「もしかして先生には、悠耶にはその手の刺激が必要だと、見当が付いていてんですか? だとしたら、もっと早く教えてくれれば」
「力くん」
少し感情的になっていた力を、保田はたしなめた。
「確かに、見当と言うか予想はあったよ。でも、言えないよ。言っていたら、力くんはすぐに悠耶くんにキスしたり押し倒したりできたかい?」
「それは……」
できない、というか、したくなかった。
おねしょを治すためという名目でのキスなんてしてしまったら、本当の気持ちが伝わらなくなってしまう。
「そういうことなんだ。だから僕も、この治療法については待つしかなかったんだけれど、よかったよ、本当に」
保田はほっとしたように微笑んだ。
「力、まだ?」
「ああ、ごめん、いま行く」
力が急かす悠耶に答えると、保田が力に数冊の女性向けファッション雑誌を手渡した。
「待合室に置いてあったものだけど、妹さん、こういうの好きだったよね」
「ありがとうございます」
保田が、力を引きとめた口実を用意してくれたことを悟って、力はぺこりとお辞儀をした。
力が診察室を出て行くのを見送ってから、保田はひとり、呟いた。
「このまま治ればいいんだけれど……」

力と悠耶は、家までゆっくりと歩いた。
ふたりの家は隣同士で、やすだ医院から歩いて十分もかからない。
家の前まで来て、悠耶が力を見つめて口ごもる。
「力、あの」
力は、悠耶が何をして欲しいかわかったが、わざと首を傾げてみせた。
悠耶はみるみる顔を赤くする。
「ね、おねしょしないように、キス、して」
「悠耶がキスしたいのは、おねしょしないためなんだな」
力が少し残念そうに言うと、悠耶は困った顔をした。
「えっと、それもあるけど……力が、好きだから」
その言葉に、力は満足そうに頷いた。
「おれも、悠耶が好きだ」
告げながら顔を近づけて、力は悠耶の唇にキスを落とした。

<第二話 完>



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第二話、終了いたしました~お付き合いくださったみなさま、ありがとうございます!
気付けばカウンターも2,000hitでびっくりです!!
今回は悠耶のおねしょが治ったということで、そして力とも恋人になったということですが、まあ、成長していってくれたほうが書き甲斐はありますからね。

次のお話も一応書いている途中でして、二人はまだ高校二年生です。
ほんのちょっと、BL度は上がっているかもしれないです。
第二話で種だけまいて書けなかったこと(保田が悠耶と、あっちのほう、と話していること)も、ちゃんと書きます。

それでは、来週から第三話が始められるようにがんばります。
タイトル何にしようかな~。

ゆずき






秋も深まり紅葉が美しい十一月下旬のある朝、神野崎力と真瀬悠耶は、K駅から高校までのまっすぐな道を歩いていた。
「おっ、悠耶」
すれ違いざまに、同じ制服の男子生徒二人に声をかけられた。
「あ、おはよう」
クラスメイトなのであろう、悠耶は二人に笑顔を返した。
それを横目に見て、明るくなったな、と力は思った。
以前の悠耶は同級生相手でも、どこか自信がなさそうにしていた。
他人と近づきすぎないことで、知られたくない秘密を守っていたのだ。
その秘密……おねしょが、二ヶ月ほど前に治って以来、悠耶のクラスメイトへの接し方は大きく変わったように、力には見えた。
悠耶に笑顔と友達が増えたことは、恋人である力にとってももちろん嬉しいことだった。
だが、可愛さに気付いた誰かが手を出すのではと考えると、不安がないでもない。
さっきの二人だって、悠耶に笑顔を向けられて、にやにやしていたように見えた。
大切な恋人を疑ったりはしないが、他の男からそういう対象として見られているかもしれないと思うと、気が気でなかった。
ちなみに二人はまだ、キスまでの関係だった。
九月の終わりの沖縄への修学旅行で、力の突発的な告白から付き合い始めておよそ二ヶ月。
デートのたびにキスはしたし、デートなんてしない日でも、チャンスがあれば唇を求め合った。
けれど、その先には踏み出せていない。
二人は幼馴染で、隣同士に住んでいる。
身体を合わせるシチュエーションも、すぐにできそうなものである。
だがこれが、意外となかった。
どちらかの両親と兄弟が揃って外泊することなどなかったし、二人でどこかに一泊してくる、というのもおかしな話であった。
まさか、ラブホテルに行ってくる、とも言えないし、男二人で入る度胸は力にはなかった。
それに力は、悠耶の気持ちがどこまでなのか、実はよくわからなかった。
キスは拒まないし、気持ちいいと言ってくれる。
その先は、どうなのだろう?
ここで力は考え込んでしまう。
自分が抱く側で考えているが、いいのだろうか?
そもそも悠耶は、その先のことをちゃんとわかっているのだろうか……?



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「力、考え事?」
悠耶に顔をのぞき込まれて、力は、はっと我に返った。
「ああ、まあ」
考えていたのが、どうやって悠耶と次のステップに進むか、何てことだっただけに、力の答えはいつになく曖昧になった。
「ふーん、おれにも言えないことなんだ」
悠耶に純真な瞳で見つめられて、力は思わず視線を逸らせた。
なんだか悠耶は、気も強くなったようだ。
力はひとつ息を吐くと、悠耶に向き直った。
「クリスマス、どこか一緒に行けないかなって考えてたんだ」
「そうなの? もちろんいいよ。どこがいいかな」
ふわっと微笑んだ悠耶が、何の疑問も持たず了承したので、力は少し罪悪感を感じた。
普段どおりでないデートを考えていたのだ。
「あのさ、泊まりがけで行かないか?」
力は思い切って言ってみた。
「えっ、泊まるの?」
「うん、嫌?」
こうなったら押し切ってしまおうと、力は悠耶をじっと見つめた。
「えっと、嫌じゃ、ないけど……クリスマスなんて、予約でいっぱいなんじゃない?」
「人気のところはもう空いてないだろうけど、探せばどこかしら空いてるだろうし」
根拠もなく断言してから、力は悠耶に真剣な目を向けた。
「本当に、嫌じゃないのか?」
「う、うん」
悠耶は躊躇いがちに小さく頷いた。
それを、恥じらいながらも身体を許してくれたのだと解釈した力は、顔がにやけそうになるのを堪えるのに苦労した。
「そっか、よかった」
爽やかさを心がけた満面の笑顔を、力は悠耶に向けた。



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その日の四限目、悠耶のクラスは古文の授業だった。
集中力が切れてくる時間帯でもあり得意科目でもあったためか、悠耶はうわの空だった。
浮かんでくるのは、朝の力の嬉しそうな顔である。
クリスマスに泊まりの旅行に行くのが嫌ではないと言っただけで、力はすごく喜んでいた。
自分と一緒にいられるのを喜んでくれるのは嬉しいけれど、悠耶は本当は、少し不安だった。
なにしろ、つい数ヶ月前まで、おむつなしでは寝られなかったのだ。
それが必要なくなって、初めての外泊。
治って以来、一度も失敗はないとは言え、心配に思ってしまうのはしょうがなかった。
だが、これはいつかは迎える試練である。
この先の人生でも必ず外泊の機会はあるだろうし、来年の、つまり高校三年生の春にも宿泊行事が待っていた。
だから、この初めての一泊を力と一緒に迎えられるのは、ありがたいことだとも言えた。
力は、宿泊行事のたびに悠耶の恥ずかしい癖が知られないよう助けてくれた、大切な幼馴染だ。
いまでは恋人になって、おむつなしでの初外泊を共にしようとしてくれている。
あれ……そういうこと……?
悠耶は気付いた。
もしかして力は、さり気なくクリスマスのデートに誘う振りをして、外泊でも失敗しないか確かめるのを手伝ってくれているのだろうか。
優しくて気が利く力のことだから、その可能性は充分にある。
悠耶は小さく溜息を吐いた。
どんな理由の誘いにせよ、もう力の前で失敗したくない。
悠耶は力のことを、頼りになって優しくて、自分なんかには釣り合わない存在だと思っていた。
ただでさえそうなのに、このうえ布団を濡らしてしまったりしたら、情けなくて、恋人として力の隣にいるなんてできそうになかった。
恋人同士になったからこそ、悠耶は力と、対等な関係でいたかった。
そのためには、いままでみたいに力に甘えちゃ駄目だ、何が起きても、自分で対処しないと。
悠耶は自分に言い聞かせ、こくりとひとつ頷いた。
力が望む恋人同士の営みにまで考えをめぐらせる余裕は、とてもなかった。



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