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ゆずきのBL小説ブログです。                      頼りになる幼馴染攻め×おねしょが治らない受けです。        ちまちま更新します。
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秋も深まり紅葉が美しい十一月下旬のある朝、神野崎力と真瀬悠耶は、K駅から高校までのまっすぐな道を歩いていた。
「おっ、悠耶」
すれ違いざまに、同じ制服の男子生徒二人に声をかけられた。
「あ、おはよう」
クラスメイトなのであろう、悠耶は二人に笑顔を返した。
それを横目に見て、明るくなったな、と力は思った。
以前の悠耶は同級生相手でも、どこか自信がなさそうにしていた。
他人と近づきすぎないことで、知られたくない秘密を守っていたのだ。
その秘密……おねしょが、二ヶ月ほど前に治って以来、悠耶のクラスメイトへの接し方は大きく変わったように、力には見えた。
悠耶に笑顔と友達が増えたことは、恋人である力にとってももちろん嬉しいことだった。
だが、可愛さに気付いた誰かが手を出すのではと考えると、不安がないでもない。
さっきの二人だって、悠耶に笑顔を向けられて、にやにやしていたように見えた。
大切な恋人を疑ったりはしないが、他の男からそういう対象として見られているかもしれないと思うと、気が気でなかった。
ちなみに二人はまだ、キスまでの関係だった。
九月の終わりの沖縄への修学旅行で、力の突発的な告白から付き合い始めておよそ二ヶ月。
デートのたびにキスはしたし、デートなんてしない日でも、チャンスがあれば唇を求め合った。
けれど、その先には踏み出せていない。
二人は幼馴染で、隣同士に住んでいる。
身体を合わせるシチュエーションも、すぐにできそうなものである。
だがこれが、意外となかった。
どちらかの両親と兄弟が揃って外泊することなどなかったし、二人でどこかに一泊してくる、というのもおかしな話であった。
まさか、ラブホテルに行ってくる、とも言えないし、男二人で入る度胸は力にはなかった。
それに力は、悠耶の気持ちがどこまでなのか、実はよくわからなかった。
キスは拒まないし、気持ちいいと言ってくれる。
その先は、どうなのだろう?
ここで力は考え込んでしまう。
自分が抱く側で考えているが、いいのだろうか?
そもそも悠耶は、その先のことをちゃんとわかっているのだろうか……?



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「力、考え事?」
悠耶に顔をのぞき込まれて、力は、はっと我に返った。
「ああ、まあ」
考えていたのが、どうやって悠耶と次のステップに進むか、何てことだっただけに、力の答えはいつになく曖昧になった。
「ふーん、おれにも言えないことなんだ」
悠耶に純真な瞳で見つめられて、力は思わず視線を逸らせた。
なんだか悠耶は、気も強くなったようだ。
力はひとつ息を吐くと、悠耶に向き直った。
「クリスマス、どこか一緒に行けないかなって考えてたんだ」
「そうなの? もちろんいいよ。どこがいいかな」
ふわっと微笑んだ悠耶が、何の疑問も持たず了承したので、力は少し罪悪感を感じた。
普段どおりでないデートを考えていたのだ。
「あのさ、泊まりがけで行かないか?」
力は思い切って言ってみた。
「えっ、泊まるの?」
「うん、嫌?」
こうなったら押し切ってしまおうと、力は悠耶をじっと見つめた。
「えっと、嫌じゃ、ないけど……クリスマスなんて、予約でいっぱいなんじゃない?」
「人気のところはもう空いてないだろうけど、探せばどこかしら空いてるだろうし」
根拠もなく断言してから、力は悠耶に真剣な目を向けた。
「本当に、嫌じゃないのか?」
「う、うん」
悠耶は躊躇いがちに小さく頷いた。
それを、恥じらいながらも身体を許してくれたのだと解釈した力は、顔がにやけそうになるのを堪えるのに苦労した。
「そっか、よかった」
爽やかさを心がけた満面の笑顔を、力は悠耶に向けた。



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その日の四限目、悠耶のクラスは古文の授業だった。
集中力が切れてくる時間帯でもあり得意科目でもあったためか、悠耶はうわの空だった。
浮かんでくるのは、朝の力の嬉しそうな顔である。
クリスマスに泊まりの旅行に行くのが嫌ではないと言っただけで、力はすごく喜んでいた。
自分と一緒にいられるのを喜んでくれるのは嬉しいけれど、悠耶は本当は、少し不安だった。
なにしろ、つい数ヶ月前まで、おむつなしでは寝られなかったのだ。
それが必要なくなって、初めての外泊。
治って以来、一度も失敗はないとは言え、心配に思ってしまうのはしょうがなかった。
だが、これはいつかは迎える試練である。
この先の人生でも必ず外泊の機会はあるだろうし、来年の、つまり高校三年生の春にも宿泊行事が待っていた。
だから、この初めての一泊を力と一緒に迎えられるのは、ありがたいことだとも言えた。
力は、宿泊行事のたびに悠耶の恥ずかしい癖が知られないよう助けてくれた、大切な幼馴染だ。
いまでは恋人になって、おむつなしでの初外泊を共にしようとしてくれている。
あれ……そういうこと……?
悠耶は気付いた。
もしかして力は、さり気なくクリスマスのデートに誘う振りをして、外泊でも失敗しないか確かめるのを手伝ってくれているのだろうか。
優しくて気が利く力のことだから、その可能性は充分にある。
悠耶は小さく溜息を吐いた。
どんな理由の誘いにせよ、もう力の前で失敗したくない。
悠耶は力のことを、頼りになって優しくて、自分なんかには釣り合わない存在だと思っていた。
ただでさえそうなのに、このうえ布団を濡らしてしまったりしたら、情けなくて、恋人として力の隣にいるなんてできそうになかった。
恋人同士になったからこそ、悠耶は力と、対等な関係でいたかった。
そのためには、いままでみたいに力に甘えちゃ駄目だ、何が起きても、自分で対処しないと。
悠耶は自分に言い聞かせ、こくりとひとつ頷いた。
力が望む恋人同士の営みにまで考えをめぐらせる余裕は、とてもなかった。



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それぞれに期待や不安を抱いて、旅行の一日目はスタートした。
十二月二十四日、向かった先は鎌倉。
午前中は学校があったので、着いたのは午後二時過ぎだった。
北鎌倉駅周辺のお寺を、二人はぶらぶらと歩いた。
二人の間には微妙な空気が流れていて、会話もあまり弾まなかった。
二人とも、夜のことしか考えていなかったのだ。
もちろん、想像している一夜には、かなりの差があるのだが。
そんなわけで、電車で移動をして五時ごろには宿に着いてしまった。
「お風呂、お先にいかがですか? いまなら空いてると思います」
民宿の仲居に案内され、二人は夕食の前に風呂に入ることにした。
大浴場は、運よく貸しきり状態だった。
「広いお風呂に二人だけなんて、贅沢だね」
悠耶が素朴な感想を述べた。
「ああ、そうだな」
力は相槌を打ったが、悠耶の裸体のある部分が視界に入ってどきりとした。
きれいなピンク色をした、胸の突起。
宿泊行事で他の奴らの目にさらされるたびにやきもきしていたそれが、いまは力だけのものだった。
思わず凝視してしまった。
「力? どうかした?」
「いや、なんでもない」
悠耶に背を向けて、力は流し場に座った。
こんなところで下半身が反応してしまうのは、さすがに気まずい。
冷水で顔を洗って、なんとか気持ちを静めた。
そんな力を見て、悠耶は入浴中ずっと心配そうな顔をしていた。
力はとにかく理性を保つことだけに集中して、体を洗い、湯船に浸かった。
頭の中は、どうやって雰囲気を作ろうかとか、そういう流れに持ち込もうかとか、そんなことばっかりだった。



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脱衣所に戻って体を拭き、部屋に置いてあった寝巻き用の浴衣を羽織る。
もちろん悠耶も同じ格好になっていた。
ぎゅっと締めた帯に際立つ細い腰、ちらりと見える胸元、火照った頬、濡れた髪、潤んだ瞳。
力はもう、我慢ならなかった。
悠耶の華奢な体を、ぐっと抱き寄せた。
そのままの強引さで、口付ける。
舌を差し込んで味わう。
互いの体が熱いせいで、じわりと汗が滲んだ。
いつもと違うシチュエーションに、興奮もしていた。
「ん……力っ、だめだよ……っ」
悠耶が首をひねって解放を求める。
「嫌……?」
力は優しく聞いた。
悠耶は先ほどよりも、さらに頬を上気させていた。
「だって、誰か来るかもしれないから……」
「来ないよ」
力は、らしくもなく根拠のない断定をした。
再び口付けようとしたが、悠耶は逃げるように俯いてしまった。
「力、どうしたの? 部屋に行けば、二人っきりなのに」
悠耶が戸惑いの表情で、上目遣いに問いかける。
部屋に行けば、二人きり。
確かに、その通りだ。
力は、たっぷりと意味を含んだ目つきで、悠耶を見つめた。
「部屋に行ったら、その、いろいろするかもしれないけど、いいのか?」
弱気な言葉だな、と力は我ながら思った。
何が、かもしれない、だ。
そのつもりで誘ったんじゃないか。
今日するんだ、と力は自分に言い聞かせた。
嫌だと言われたところで退けないくらいに、体は熱しきっている。
「う、うん」
悠耶は顔を赤らめて、はっきりと頷いた。
力は、ぎゅっと眉をひそめた。
そうでもしなければ、情けないにやけ顔を晒してしまいそうだった。
もちろん本当は、満面の笑みを顔中に広げて、最高に嬉しいと叫びたかった。
だが、そんな取り乱した姿を見せるのは、かっこう悪いと力は思っている。
「じゃ、さっさと部屋に行くか」
手早く荷物をまとめると、機嫌を損ねたかのように足早に脱衣所を出た。



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