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ゆずきのBL小説ブログです。                      頼りになる幼馴染攻め×おねしょが治らない受けです。        ちまちま更新します。
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「力、朝飯食べた?」
駅のホームに着くなり、悠耶が力に問いかける。
次の電車が来るまでには、まだ八分ほどある。
「いや」
力は簡潔に答えた。
「やっぱり。これ、食べる?」
悠耶がショルダーバッグから何かを取り出して、力に渡す。
袋に包まれたそれは、おにぎりだった。
「え、いいのか?」
力が包みをはがすと、海苔の匂いが鼻先をくすぐる。
思い出したように胃が活動を始めて、力は強烈な空腹を感じた。
「うん」
「サンキュ」
力はおにぎりにかぶり付いた。
まだ温かい。
「美味い」
平凡な感想にも、悠耶は嬉しそうに笑った。
力は、ぺろりと平らげてしまった。
「もしかして、悠耶が作ってくれたのか?」
電車の中で力は、ふと気付いて聞いてみた。
悠耶の母親は料理研究家で、悠耶も料理を手伝うことが多いという。
力は、悠耶がエプロンを着けて、ほかほかのご飯を握るところを想像した。
それを料理と言えるのかは疑わしいが、何だか微笑ましかった。
「うん」
悠耶が少し照れて頷く。
力の宿泊行事は、片思いの相手が握ってくれたおにぎりで始まったわけである。
楽しい旅行になりそうだ。
顔が思い切りにやけそうになる。
しかし、悠耶の言葉の続きを聞いて、少し複雑になる。
「また、迷惑かけるから」
消え入るような声だった。
この件に関して、力はこれっぽっちも迷惑だと思っていないということは、何度も悠耶に伝えてある。
だが、こればっかりは本人次第だ。
力がどれだけ理解して、協力しても、一番辛いのは悠耶自身だ。
力以外に知られる心配はないとわかっていても、外泊は気が重いのだろう。
「ま、時間に遅れた上、おにぎりまでもらっちゃって、迷惑かけてるのは俺のほうだけれどな」
何気ない口調で、力は言った。
「そんなの、ぜんぜん迷惑じゃないよ」
「じゃ、お互いさまだ、な?」
力が同意を求めると、悠耶は小さく頷いて、ありがと、と呟いた。


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宿泊行事の一日目は、あっという間に終わった。
文化財に指定されている寺や、近くの美術館を廻ると、もうホテルへ移動だった。
隣接したスポーツ施設で、クラスごとにバレーボールや卓球などのスポーツを楽しむ時間があって、夕食、入浴も済ませた。
悠耶と力は、ついさっきまで他の部屋でおしゃべりに興じていて、二人の部屋に戻って来たところだった。
おしゃべりにはクラスの男女のほとんどが集まっていた。
学校で毎日、顔を合わせるメンバーなのに、夜の私服での集会には、密やかな緊張をはらんだ空気が流れていた。
みなが異性を意識しつつ、意識していることを悟られまいとする甘い均衡が、形成されていた。
力も、女子生徒たちにとっては一人の異性だった。
ある女子生徒は、目をぱちくりさせて熱心に話しかける。
また別に、何度も笑顔を見せ付ける子もいる。
力はいつもの気のよさで、それらに丁寧に応えていた。
その雰囲気に、悠耶は馴染めなかった。
悠耶と仲良くなろうと、声を掛けてくれる女の子もいた。
だが悠耶には、自分は彼女たちとはつり合わない、という意識が強い。
悠耶を恋愛対象として試すような目つきが、彼女たちを大人に見せた。
胸のふくらみは、身体はすでに大人である証拠だ。
まだ悠耶は、精神も身体も大人ではなかった。
みなが大人であることを隠すために、色気のある話題を避けて他愛のない雑談を交わすなか、悠耶は大人でないことを悟られまいと、周りに同調して笑顔を作っていたのだった。



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それに比べれば、力と二人きりの現在は、数倍は快適だ。
第一、静かだ。
心も落ち着く。
「そろそろ寝るか?」
力が、奥に置かれたほうのベッドに、ごろんと寝転がる。
「そうだね」
悠耶が答えると、力は寝返りをうって悠耶のベッドに背を向けた。
悠耶が、おむつを取り出すのを見ないようにとの気遣いである。
こういうとき、力は本当に優しい、と改めて思い知る。
隣に住む幼馴染が力で、本当に良かったと思う。
おむつは色の付いた袋に入れて、外からでは何が入っているのか見えないようにしてはある。
だが、就寝直前に、それを持ってトイレに入れば、中身など容易に分かる。
あれにおむつが入っているのか、という視線でじっと見られでもしたら、それが例え力でも、恥ずかしくて情けないだろう。
悠耶はまず用を足してから、慣れた手つきで装着して、トイレから出た。
自分のベッドに座ると、力が寝ころんだままこちらを向いた。
「悠」
「ん」
「明日の自由時間、一緒に廻ろうな」
力の言葉は、悠耶には少し意外なものだった。
明日は午後に三時間の自由行動時間がある。
悠耶は、力から特に何も言われていなかったから、当然、一緒だと思っていたのだ。
「うん、俺、そのつもりだったけれど」
力は、他の誰かから誘われていたりしないのかな?
ふと、疑問に思った。
そういえば、先ほど部屋に戻って来るとき、数人の女の子たちに呼び止められていた。
もしかしたら、明日の誘いだったのかもしれない。
聞いてみようとして、力の優しい笑顔にぶつかる。
「そっか、よかった……おやすみ」
おやすみ、と悠耶も言って、電気を消した。




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冷たい……。
不快な感覚に、悠耶は目を覚ました。
ほぼ無意識に手が動いて、股間から尻にかけてを、続いて尻の下のシーツを触ってみる。
大丈夫だ。
悠耶は安堵の息を吐き出した。
おむつから漏れてしまうことはなかったようだった。
ゆっくりと、悠耶は身体を起こした。
薄暗い部屋、見慣れない調度。
右を向けば力のベッド、その奥にある大きな窓はカーテンが閉まっているが、隙間から差し込む僅かな太陽の光が、朝を知らせる。
力はぐっすりと眠っている。
携帯電話で時間を確認すると、六時五十五分だった。
アラームをセットした七時より、早く起きたのだ。
悠耶はアラームを解除した。
トイレに入り、汚れたものを処理して、タオルを濡らして局部を拭いた。
ピピピピっ、ピピピピっ。
その途中で電子音が響き、悠耶はびくりとした。
力の携帯電話のアラームが鳴っているのだ。
暫く鳴り続けて、止まる。
悠耶がトイレから出ると、力は携帯電話を握り締めてベッドに突っ伏していた。
悠耶は、自分のベッドに乗っかって、力の顔を覗きこんだ。
また寝ちゃったのかな?
そう思ったとき、力が薄く目を開けた。
「おはよ、悠」
「おはよ、力、まだ二十分は寝られるよ」
時刻は七時、朝食は七時半からだった。
さっと顔を洗って着替えれば出発できる力は、集合の十分前までは寝られるはずだった。
それを、悠耶に合わせて七時にアラームをかけていたのだ。
悠耶は、今日は無事だったが、寝相が悪かったり吸収しきれなかったりで、下着やパジャマを汚すことがある。
最近ではごく稀になったのだが、万が一のときに焦らないように、早めにアラームをセットしたのだ。
力は朝が弱く、一分一秒でも長く寝たいはずである。
それを悠耶は知っているから、申し訳ない気分になるのだった。
「いや、起きる」
力が目をこすって立ち上がる。
二人が顔を洗って身支度を調えても、朝食まで少し時間が余った。
手持ち無沙汰にベッドに座って、悠耶が切り出した。
「俺と同室じゃなかったら、もう少し寝られたのに、ごめん」
こういうことを言うのを、力が好まないことは分かっている。
でも、悠耶は言わずにはいられなかった。
「悠耶じゃない奴と同じ部屋だったら、二人で寝坊っていう可能性が高いけどな」
冗談めかして力は笑う。
悠耶は、作り笑顔を浮かべることもせず、小さく頷く。
「それに、俺がこんなじゃなければ、力はもっと自由に誰と同室になるかとか決められて、自由行動も他の奴とできるし」
「自由行動は関係ないだろ」
力が、以外にも強い口調で反論した。
「俺は、悠と一緒の部屋でも違っても、自由時間には悠を誘うし、それに」
力が言葉を止めて、ちら、と悠耶の顔色をうかがう。
「悠耶がどんなでも、俺は一生、悠耶と同室がいい」
「えっ、一生……!?」
悠耶は思わず聞き返した。
一生って、これからの人生で、まだ、そんなにたくさん宿泊行事があったっけ?
そんなことを考えたのである。
だから、力が赤くなっていても、なぜなのか理解できなかった。
「い、いや、違……いまのは取り消し……」
そわそわと、力は逡巡する。
だが、それもつかの間。
「じゃなくて、保留!」
そう言い直した。
「さ、飯だ、飯」
そして急いで立ち上がると、ドアを開けて出て行ってしまった。
「待てって」
悠耶も部屋の鍵を持って、慌ててその後を追った。
「力、保留って何だよ」
自由行動や帰りの電車の中でまで、悠耶は何度も聞いたのだが、力は教えてくれない。
「時が来たら、な」
そう言うだけである。
来年の宿泊行事のときに、また聞いてみよう……そのときは、治っているといいな。
かたくなに口を閉ざす力の隣で、そっと、悠耶は願った。

<第一話 完>



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第一話、お付き合い頂きありがとうございました~。
いかがでしたでしょうか……?
ちょと平べったい内容になっちゃったかなぁ。
あと実は、まだ二人のキャラクターがあんまり固まっていません笑。
おねしょのシーンも少ないですが、ちょっとずつ、いろんなパターンを描けたらいいなと思っています。

第二話では、悠耶と力は高校二年生になっています。
新しい登場人物も出てきます。

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