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ゆずきのBL小説ブログです。                      頼りになる幼馴染攻め×おねしょが治らない受けです。        ちまちま更新します。
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あれ、何だったんだろう?
着替えを終えた悠耶は、トイレの中で洗面台に手をついて考え込んだ。
力の顔が近づいてきたと思ったら、唇をくっつけられて……つまり、キスされて……キス?
そのときの感触を思い出して、はぁ、と悠耶は熱い息を吐き出した。
無意識に目を瞑って、自分を抱くように腕を廻す。
気持ちよかったな……。
そして、それに続く告白。
好き、か……。
悠耶にはまだ、それがどういう感情なのか考える余裕はなかった。

朝からそんなことが起これば、修学旅行二日目の力と悠耶が、なんとなく気まずくなるのも仕方がなかった。
ベッドを乾かす時間はなかったので、清掃不要の札をドアノブに下げておいた。
二日目は、マリンスポーツだった。
九月の終わりとは言え、沖縄はまだ暑い。
それなのに、悠耶は水分補給を控えている。
「飲まないと脱水症状になるだろ」
力はスポーツドリンクの入ったペットボトルを、押し付けた。
「うん……」
悠耶は素直に受け取りはするが、開けようとはしない。
昨晩のような失敗をおそれているのだ。
「あのさ、力」
悠耶に呼びかけられて、力はびくっと振り向いた。
「なんだ?」
「いや、やっぱり、いい」
悠耶は顔をそらせてしまった。
この居心地の悪さは、まさに自分の唐突な行動が作り出してしまったものであり、力は、何とかしなければと思う。
「悠、夜にちゃんと話すから、とにかくいまは、水、飲んでくれ」
どぎまぎと脈絡のないことを言ってしまった気がしたが、悠耶は小さく頷いて、ペットボトルを口にしてくれた。



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そして、沖縄での二回目の夜。
濡れた悠耶のベッドは、備え付けのドライヤーで乾かして何とかなった。
昨晩と同じようにお互いのベッドに座って、ただし今晩は、話し始めたのは力だった。
「朝は本当にごめん、急に、あんな、それで、もう一度ちゃんと言わせて欲しいんだけれど」
そこまで言って、力は改めて悠耶と向き合った。
悠耶の瞳は、いつもどこか不安を湛えていて、その瞳をいま力は見つめて、自分だけのものにしたいと思った。
「おれは、悠耶が好きだ。友達とかじゃなくて、好きなんだ。恋人同士になりたいんだ」
言い終わってなお、力の心臓は跳ね続け、悠耶はと言えば、じっくりと考え込むように、言葉を探すように黙ってしまった。
力は、急に不安になった。
悠耶は自分を受け入れてくれると思っていたが、先走りすぎたのではないか、と。
「おれ、だめだよ」
悠耶の言葉は、力に想像以上のショックを与えた。
「まだ毎日失敗なのに、力の、恋人なんて、だめだから」
「失敗なんて関係ないだろ」
力はむきになっていた。
「でも、力に釣り合うようになってから答えたい」
悠耶の強い主張に、力は言い返せなかった。
「それに力だって、去年の宿泊行事のときに、保留って言ってたこと、あるでしょ?」
はっと、力は思い出した。
それは、去年の宿泊行事で同じ部屋に泊まったとき、思わず、悠耶と一生同室がいい、とプロポーズまがいの告白をしてしまったことだった。
幸か不幸か、悠耶にはまったく通じなかったわけではあるが。
「それは……恋人同士になれてからの話だから」
そこでまた、沈黙が流れた。



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それを破ったのは、悠耶の申し訳なさそうな声だった。
「あのさ、力、おれ、力のこと、本当は好き、なんだと思う」
その告白に、力の頬がぴくりと緩む。
「だって、あ、あのね、朝の、あれ、気持ちよくって……またしたいっていうか」
そこで、二人は見詰め合ってしまった。
もはや力には、悠耶の唇が、一度は自らの口で覆った唇が、色っぽく誘うように見えて仕方がない。
悠耶のほうから、またしたい、と言っているのである。
普段は冷静な力とは言え、健全な男子高校生であることに変わりはなく、誘惑に打ち勝つことはできなかった。
「悠耶、悠耶」
愛しい悠耶を抱きしめて、二度、三度と夢中で口付ける。
ちゅ、ちゅ、という音が響く。
「あっ……は……」
悠耶の呼吸を、力は間近に感じる。
まずい、これ以上はまずい。
力は、必死に自身を抑制した。
さすがに修学旅行先で押し倒すわけにはいかない。
今日はここまでだと、懸命に己に言い聞かせた。
そして、ばっと悠耶から離れると、一目散に自分のベッドに潜り込んだ。
「おやすみ」
それだけ言って、悠耶に背を向けてぎゅっと目を閉じたのだった。
「……おやすみ」
悠耶も戸惑ったようにベッドに入る気配がする。
暫くして悠耶のベッドから寝息が聞こえてくるのを見計らって、力はトイレに入ると、形を変えた分身をなだめた。
悠耶は寝てしまったが、反応しなかったのだろうか……?
自分だけ夢中だったのかと考えると、少し寂しい気がする。
なんにしても、また明日の朝も謝罪から始めねば、と力は小さく息を吐いた。



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沖縄での三日目の朝が来た。
携帯電話のアラームがどこかで鳴っていて、力は夢うつつにそれを止めたが、覚醒には至らなかった。
そこに、悠耶の小さな悲鳴が飛び込んでくる。
「あっ、あれっ?」
その声に、力はがばっと起き上がった。
隣のベッドの悠耶は、昨日と同じように上半身を起こした状態で固まっている。
まさか、またベッドを汚してしまったのだろうか、昨日は水分を摂り過ぎないように、かなり注意していたのだが。
力は起き上がって、悠耶に近づいた。
「悠耶……?」
そっと、頭を撫でようと手を伸ばす。
「待って、力」
悠耶はそれを拒むと、躊躇うことなくベッドから出てトイレに向かった。
力は悠耶の寝ていたところを調べたが、濡れているということはなかった。
暫くして悠耶は、顔を紅潮させて興奮気味にトイレから出てきた。
「力、おれ、してなかった」
「え……?」
力は、悠耶の言葉の意味を一瞬捉えかねる。
「おねしょ、しなかった!」
「ほ、本当に!?」
こくこくと頷く嬉しそうな悠耶を、力は思わず抱きしめた。
「やった、ついにやったな、悠耶」
力は、がしがしと悠耶の頭を撫でた。
「うん!」
悠耶の満面の笑顔は、力も久々に見る、不安の陰の感じられないものだった。



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やすだ医院に二人の男子高校生が訪れたのは、九月の最後の金曜日だった。
夏の日が恋しく感じられる、残暑も薄れつつあるこの日、連れ立ってやって来た真瀬悠耶と神野崎力は、医院の主である保田衛に紅芋タルトのひと箱を手渡した。
「修学旅行のお土産です」
悠耶の声に、顔に、久しく感じられなかった溌溂さがあった。
「ああ、沖縄に行っていたんだよね。ありがとう」
保田は小児科医の優しい笑顔を悠耶に向けてから、力の表情をうかがった。
今日の力には、子供を見る親の温かさに加えて、新婚のような初々しさがあった。
新婚?
保田はこの二人が今日、自分に何を伝えにきたのかを想像する。
悠耶の溌溂さが、そして力の初々しさが示すことを。
例によって診察室に二人を座らせると、まず口を開いたのは悠耶だった。
「先生、今日は、ご報告があって来ました」
「うん」
保田はゆったりと相槌を打つ。
力はじっと悠耶を見つめている。
悠耶が、嬉しそうに保田の目を捉える。
「おれ昨日、おねしょしなかったんです」
告げる悠耶の声は震えていた。
その報告を保田は予期してはいたが、悠耶の口から聞いてみると、保田も感極まった。
「本当かい?それは、よかった!」
「はい」
悠耶はこくりと頷いて、こんなことを言い出した。
「力が、治してくれたんです」
「力くんが?」
悠耶が、おねしょが治ったのは力のお陰だと思っていたなんて、力自身も初めて聞いたことであり、思わず隣りの悠耶に顔を向けた。
「悠、おれは何もしていないぞ」
「キ、キス、してくれたでしょ?」
悠耶の言葉に、力は目を見開いて顔を紅潮させた。
「おれ、キスするの初めてだったし、初めてキスした日におねしょしなかったんだから、やっぱりキスのお陰だと思うんです」
悠耶は赤くなりながらも、真剣に保田に訴えた。
「まさか……」
力が呟くのも無理はない。
ほとんどの人は、ファーストキスのかなり前におねしょが治るものである。
だが保田は、悠耶の論を真っ向から否定する気はなかったのである。
「いや、悠耶くんがそう感じるのなら、昨日おねしょしなかったのはキスのお陰なのかもしれない」
力は心底意外そうな顔を保田に向けたが、保田が前言を翻す素振りのないのを見て取ると、自分で解釈をしたのか、徐々に納得の表情に変わっていった。



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