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ゆずきのBL小説ブログです。                      頼りになる幼馴染攻め×おねしょが治らない受けです。        ちまちま更新します。
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「悠耶くんと、何かあったのかい?」
「あ、いえ、何も。ただ……」
力の話に拠れば、悠耶は二年生に上がってから、会話が続かなくなったり、笑顔に無理が見えたりと、どことなくよそよそしかったのだそうだ。
修学旅行の班は、悠耶は同じクラスの意多綾人(いだ あやと)という男と、力は彼のクラスの風見爽介(かざみ そうすけ)と組んでいるとのことである。
「それで、これは本当は悠耶に直接聞くべきなんですが」
力が控えめに切り出す。
「悠耶、治ったんですか?」
確かにおねしょが治ったのであれば、悠耶は力以外の人物と同じ部屋で寝ても心配がない。
治ったから他の人と同じ班になったというなら、悠耶はおねしょを隠したいがためだけに、力をこれまで選んできたことになる。
そうであっても力は、悠耶のおねしょが治ったことを心の底から喜べるのだろうか、と保田は思った。
「いや僕も、治ったとは聞いていないよ」
「そう、ですか」
力はゆっくりと頷いた。
そう、悠耶は治っていないはずだ。
治ったのなら、保田にも力にも報告するだろう。
それならば、修学旅行では力と同室でなければ困るのは悠耶だろうに、なぜ力と同じ班にならなかったのだろうか。
保田にも思い当たるところはあるが、まずは力の考えを聞こうと、保田は力に目を向けた。
力は保田の意を的確に汲む。
「おれは、いい傾向だと思うんです。いままでの宿泊行事は全部、悠耶はおれと一緒だったけれど、もう高校生だし、別々に行動するっていうのも。悠耶がおれ以外のやつで、同室でも大丈夫だと思えるやつがいるんなら、きっとそいつも、悠耶の大切な友達になると思うんです」
「つまり悠耶くんは、おねしょを知られてもいいと思える友達と出会って、それで今回は力くんではなくその友達を選んだ、と」
「はい」
力は明るく力強く、自分が選ばれなかったことなど露ほども問題でないというように頷いた。
そんなわけはない。
力の、悠耶を見つめる瞳の想いの強さを、保田は知っている。
「力くんは、それでいいのかい?」
保田自身、何が最善かわからない。
「本当は、悠耶くんと一緒がいいんだろう?」
「それは……そうですが」
力はあごに指を当てて考える仕草をした。
保田は小さく息を吐いて、自分の考えを述べ始めた。
「実は、四月に悠耶くんが来たんだ。治るのかなって心配していて……悠耶くんは、焦っているんだと思う。特に、力くんみたいな大人びた子の隣にいるのでは、ね」
力は目だけを動かして、何かを読み取るように、測るように、保田を見つめた。
保田は苦笑する。
「ごめんごめん、深い意味はないんだよ。ただ僕は、力くんには悠耶くんのそばにいて欲しいって、思うんだ」
力はいぶかしげに二度三度と瞬きをした。
「衛先生」
力の言葉の続きを遮るように、保田は立ち上がって力に背を向けた。
「いま、僕が言えるのは、これだけだよ」
悠耶は、焦っている……。
力は黙して、保田の言葉を反芻した。



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